10. 視力

4月、母は目が見えないと不調を訴えた。かなり見づらいようだ。

元々、目には眼底出血、白内障(手術済み)、加齢性黄斑、などの問題を抱え、眼科で治療を受けていた。予約なしで行った眼科は混雑しており、午後一番くらいに行ったが、診療が終わったのは最終7時頃。半日がかり。丁寧に診察はしてくれたようだが、検査を含めて飛び飛び、「緑内障か?」で主要病院に紹介状を書いてくれた。車イスで半日近く座っていられたのは収穫だが、本人は大分疲れたようで心配。往復は福祉タクシー。車イスは小さめ軽量でもそれなりに場所が必要で固定も必要。最近は福祉タクシーも増えているそうだ。その後、大きな病院に行くには体力がないと判断しそのままとなった。

ベッドの側に置いたテレビは見なくなったので、視野がだんだん悪くなっていったものと思う。最初の頃は、一緒に写真を見たり、掛け軸を気にしたり、窓外風景を見たりしていたが、だんだん気が逸れていくのがわかった。栄養不足もひどくなっていけば、それも視野に影響しただろう。だからこそ、声を出して人を呼んでいたと思う。ずっと一緒にいた姉は、器用ではなくても、間違いなく母の命を繋いでいた。