15. 食(3)

だんだん食が細くなっていく。一食あたり「ムース2個+アルファ」を 食べてもらう計画が、毎食半分くらいになった。この頃は食事をしている間に寝てしまっているようで、大きな声をかけながら食べてもらう。ヨダレが出てくることが多くなり、これ以上無理と判断して食事を終わりにすることが増えた。タンが絡むことも多い。代替え食品も考えられるものがなくなった。ムースの口への運び方も大分と考え、一口分を少なくして舌に乗せ、追加でお茶を入れることで飲み込んでもらう方式にした。

ルタオのドゥーブルフロマージュだけは結構後まで食べてくれた。もちろん柔らかい部分だけであるが。一緒に家族旅行した北海道小樽のケーキなのでとても嬉しい。そして本当にわずかしか食べられない事態が起きた。最初は絡んだタンを取ることで多少解決できたが、それも難しくなった。この頃母に「ずっと食べさせてくれる」と頼まれた。これが、母が話すのをはっきり聞いた最後くらいかもしれない。いつもどおり東京に戻った。後悔は深い。どこかでもう少し長く時間をとっていたらもしかしたら、、と思う気持ちはあるが、生き方は変えられなかった。母は食べられることへの希望を繋げなくなったのかもしれない。