20. 最期、眠らない2日間 

「食べられない」事態がやってきた。水分点滴をし、喀痰の除去をし、合間の落ち着いたところで食事を試みるが、飲み込むことができない。この状態で少し苦しそうな呼吸を続けていると口の中が乾燥してくるのがわかる。お茶をストローにためて少しずつ横になっている母の口に運ぶが、これも量を増やすとムセてしまう。痰に胃の内容物様のものが混じったところで、気持ちが見守るに切り替わった。生きていて欲しいけれど、苦しい時間が続かないといい。食べられなくなって1週間だ。

最後と決めた水分点滴の後、大分とタンに苦しみ、大方出し尽くしたと思われたところで、少し息は苦しそうだが、暫しの静穏。今週は休暇をとっていたので、ここで1.5日の仕事に行くことに決めた。

最期の2日間、母は眠らなかった。

夜になっても目を開けている。傾眠傾向が強かったここのところとは違う。私の方が眠くなって「お母さん、眠いので寝る」と言って部屋で睡眠をとる。夜中に2度目を覚まし見にいくと、同じように目を開いて、横向きでベッドの柵を握りしめている。こうなると、つぶらな瞳というより、迫力さえある。後で考えれば目を閉じることができなかったのであろう。朝早く出勤。