19. 命の長さ

「命の長さ」は誰にもわからないが、人の関わる部分もある。それが医療だ。診断、治療、いずれも命の長さに影響する。時にはダイレクトに。また、政府のコロナ対応としての緊急事態宣言も、コロナではない患者の「命の長さ」にも大きな影響を与えたはずだ。今回、私たちは母の在宅介護を選ばざるを得なかった。病院に面会に行けない状況でコミュニケーションがにわかに難しくなった母を病院に入院したままにしておくことはできなかった。入院期間中、母はほとんど点滴でのみ栄養をとっていた。病院が「完全看護」を目指しても、実際に状況によって難しいのは明らかだ。私たちとしては「必要な付き添い」のつもりが、「面会」として断られた。書きたい「命の長さ」はもう一つある。在宅介護には「最期」が伴うことが少なくない。母の場合、私たちの提供する食物が取れるかどうかは、母の命の長さに影響した。栄養不足が顕著となったところで、水分補給としての点滴を提案され、依頼した。この対応も看護師だ。後にわかったことで、これは反面、痰の量の大幅アップに繋がり、食べるのを難しくした。バランスは難しい。端的ではないにしても、母のQOL(生きることの質)、生きる時間に影響したはずだ。「命の長さ」は神のみぞ知るだけではなくなってきたのかもしれない。医療には期待、感謝しつつも、自身の選択、QOLを大事に生きることを忘れないようにしよう。