22. 生命

生命とは不思議である。

母と繋いだ手はそのままで、もし呼吸を止めたのを見ていなかったら、私は母が亡くなったことに気づかなかったかもしれない。むしろ、それまでおそらく酸素不足で紫がかった色をしていた手や喉の周りに肌の白さが戻ってきた。母は自分で目を閉じることができなかった。彼女の命はどこで終わったのだろう。ここでは科学的詳細は問いかけの外であるが、呼吸―心臓の拍動―意識―脳の働きー残された身体。それがだんだん固くなり、水分を失っていく。明日、骨を残して自然に帰っていく。

“生”を受けて、呼吸、心臓の拍動、そして意識。空気と食で自らの身体を育み、人格を持つ人となり、生命を継なぐ。

彼女の意識はどこで停止したのだろう。