3. 食 (1)

食事のメインは「ムース」。様々な栄養が入っており、お湯で溶かし固め、柔らかいムースを作る。お茶などの飲み物は “とろみ ”をつける。

嚥下困難者の食事のキーワードは“とろみ ”。トロミ のない食品、飲料は飲み込みが難しい。お茶にトロミ、水にトロミ、食品は柔らかく。トロミをつける用のパウダーは多種類売られているが、主成分はほぼ、”デキストリン“”増粘剤”である。最初は怖がって、飲み物に多めに入れていたが、飲み物と食べ物は異なる方がいいと思えるようになり、飲み物のトロミは少なめにした。見た目はそれほどでなくとも、入れた分のトロミはついている。

最初の頃は様々な食品を試した。紹介された栄養食品やネットで探した食品。母は味がわかるという救いの中、食感が同じなら大丈夫と考え、茶碗蒸し、簡易ミキサーを使って、スープ、味噌汁、カボチャなどを試す。スープや味噌汁は比較的食べてもらえることが多かった。不評のものも少なくなかった。味が合わないもの、食感でむせてしまうもの。ダメなら基本の「ムース」に戻る。食品の柔らかさ滑らかさのほか、時々の母の状態や、こちらの準備、口への運び方などにも依存していたと思う。食べてもらえると嬉しい。

使っていたスプーンはK+という嚥下専用のスプーン。スプーンの窪み部分の形と柄の長さが特長。刺激機能もあるようだが、我が家で使うことはなかった。食物が気管に入ってしまう”誤嚥”に気をつけるように言われたが、これが気になることはあまりなかった。ただ、母は良くむせた。食べてもらおうという気持ちが少し無理をさせることにつながったかもしれない。母はむせることで誤嚥しなかったのかもと思う。