9. 車イス

少し春めいてきた頃、母が車イスに乗れるのではないかという話が出て、車イスもレンタルすることになった。看護師やヘルパーが姉と一緒に車イスで何度か外出をさせてくれた。座っている状態が安定とは言えないが、母は外出を好んだ。元々家庭菜園を好んだ両親、手入れこそあまり良くなかったが、母は外や植物が好きだった。

用意された車イスは、マニュアルで軽くて扱いやすい。ベッドから乗せたり降ろしたり、外出用に上着を着せたりはちょっと大変だ。頻回には出かけられなかったが、それでも良かったと思う。桜の頃、一緒に車イス散歩に行った。花屋で小さな花(インパチェンス)を購入、母は「蕾がたくさんあるのがいい」と言った。元気な頃社会活動をしていた「交流センター」の前に立ち寄り、小学校の桜を眺めて帰ってきた。車イスを押すのも多少の運転感覚はあるといい。押している側には、顔、様子がわかりづらいので、母くらいの体調だと2人付き添いが安心。夏は体調も悪そうで、暑くて、秋になったらまた行けるかな、、は叶わなかった。