11. 食(2)

食事は私たち家族が母の口まで運ぶ。これはサービス業者がやらないサービス。つまり、食べることができなくなるか、口まで運ぶことができなくなった時に最期がやってくるお約束。

手際でむせさせてしまうのか、仕方ない範囲なのか、母の様子を見ながら、食事を口に運ぶ。最初は色々考えて用意した食事、だんだん一番食べやすい「ムース」とお茶だけになってきた。記録をつけていると食べる量が減っていくのがわかる。一計を案じた。ムースの栄養アップである。栄養補給に使われる「アミノバイタル」の顆粒を適量入れてみた。溶けるかどうか、味が変わらないか。試したところ大丈夫らしい。お茶が飲めるうちはこのムースを半分採用することにした。取れる水分が少なくなったらこの作戦はちょっと怖い。水分は大事だ。栄養、エネルギーをと焦っても、バランスに気をつけて食べてもらえる範囲、以外にできることはない。

嚥下困難では誤嚥性肺炎に気をつけなければならない。母はよくむせて心配になったが、誤嚥よりはむしろ、窒息させてしまわない方が大切かもしれないと思うようになった。“ムセル”は防御でも体力を使ってしまう。食べる側の慣れ、食べてもらう側とのタイミング、意思疎通、信頼関係は大事だ。「食べてもらいたい」という意識が強すぎて無理をさせた時もあったと思う。状態、様子を見るは基本だ。食事にかかる時間は、担当する私と姉で大違い。私はなるべく短い時間の方がいいと思うので、正味30分くらい、が、だんだん時間がかかるようになって1時間くらい。姉は私の2倍くらいの時間をかけて食べてもらっていた。それはどちらにとっても大変そうだ。